抵当権消滅請求(ていとうけんしょうめつせいきゅう)とは、抵当不動産について所有権を取得した第三者が、第383条の規定により、同条3号の代価又は金額を抵当権者に提供して抵当権の消滅を請求できる制度のことをいう(379条)。上述の代価弁済制度との違いは、抵当不動産の第三取得者側が主導的に手続を開始することである。
第三取得者を保護するための制度であるから、主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができず(第380条)、また、抵当権者の地位の安定のため、抵当不動産の停止条件付第三取得者は、その停止条件の成否が未定である間は、抵当権消滅請求をすることができない(381条)とされる。
抵当権消滅請求の手続きとしては、登記をした各債権者に対し、次の書面を送付する必要がある(第383条)。
1. 取得の原因及び年月日、譲渡人及び取得者の氏名及び住所並びに抵当不動産の性質、所在、及び代価その他取得者の負担を記載した書面
2. 抵当不動産に関する登記事項証明書(現に効力を有する登記事項のすべてを証明したものに限る)
3. 債権者が2ヶ月以内に抵当権を実行して競売の申立をしないときは、抵当不動産の第三取得者が1に規定する代価又は特に指定した金額を債権の順位に従って弁済し又は供託すべき旨を記載した書面
抵当権請求の時期的限界については、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に抵当権消滅の請求をしなければならないとされている(382条)。
登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は、消滅する(第386条)。債権者のみなし承諾規定の存在につき384条参照。
抵当権消滅請求は、平成15年(2003年)法律第134号による民法の改正により、従来の滌除(てきじょ)に代わるものとして創設された制度である。