リロケーションとは英語の「relocation」(移転または配置転換)からとった転勤者の留守宅を一定期間賃貸する業務のこと。
借地借家法が大幅に改正され、平成12年(2000年)3月1日付けで施行された「定期借家権」により、一定期間経過後に契約を終了することが法的に可能となり、転勤者の留守宅管理を指す用語として使われるようになった。
欧米では言葉の意味どおり、リロケーションサービスとは、グローバルで移転・配置転換(転勤)をサポートするサービスとなる。アメリカで生まれた産業であるが、日本の転勤者の留守宅管理を指す用語とは明らかに違う。
アメリカを中心に欧米グローバル企業では転勤に伴いリロケーションサービス会社を起用する。本来のリロケーションサービスとは、留守宅管理ではなく、転居に伴う手続きに必要な海外引越・ビザ取得・航空券手配・家の売却と手配・税務・子女教育相談まで転勤手続きをトータルにサポートするサービスである。
特に欧米では転勤にあたってマイホームを空家にする価値観は無く、売却という考えが中心となり、欧米リロケーション会社の収益に占めるマイホーム売却とそれに伴う税務手続きは大きい。
ところが日本では「折角買った夢のマイホーム」ということで転勤終了後は我が家に戻りたいという価値観があり、そのため転勤期間中の空家になったマイホームの管理というニーズがあった。ところが空家にしている間もローン返済は続き、それをカバーするために賃貸をしたくても、定期借家権がない時代は自分が帰国するときに明け渡してもらえないという法律上のリスクがあった。
日本で初めてリロケーションサービスが開始されたのは、1984年に?日本リロケーションセンター(現:株式会社リロ・ホールディング)が最初である。
当初、欧米流リロケーションサービスとしてマイホーム賃貸だけでなく、転勤による雑事一切をサポートするサービスを展開したが、転勤期間中のマイホームを賃貸し、帰任時に明け渡しができるサービスが市場に受け入れられ、またテレビCMも影響してこのサービスが注目された。今まで転勤者のマイホームを、売る/空家にする という2つの選択肢に加えて、賃貸するという選択肢が増えた。帰任後にマイホームに戻りたいというニーズに合致し、サービスの急激な拡大とともに日本国内においては"リロケーション”という言葉が“転勤者の留守宅管理”を指す用語として使われるようになった。
2000年以降、定期借家法が施行されたあと、法律上も期間を限定して貸せるようになったため、不動産賃貸会社がリロケーション・サービスを提供するようになってきた。しかしながらアパート大家と違い、不動産法律に不慣れな転勤者オーナーとの対応や、分譲マンション/戸建という第三者に貸すことを前提に建てていない仕様・運営から発生するトラブルに困惑している不動産賃貸会社も出てきている。特殊な賃貸運営であるため不動産賃貸会社の経験とノウハウは重要である。
リロケーション会社の契約に介在する方法としては3つの形式がある。
* 転勤した建物所有者の代理人としてテナントと賃貸借契約を締結する形式
* 転勤した建物所有者からリロケーション会社が賃借して、テナントと転貸借契約を締結する形式
* 転勤した建物所有者とテナントが賃貸借契約を行い、その仲介業務を行う形式
転勤者自身が近郊に転勤する場合や不動産賃貸の経験が豊富な転勤者は自らが契約当事者となるケースはあるが、海外へ転勤する場合や不動産賃貸を行ったことがない転勤者はリロケーション会社から契約当事者としてのリスクや義務を十分説明を受けて選択する必要がある。
昨今の日本企業のグローバル展開が急激に進む中で、リロケーション会社の果たす役割は変わりつつある。その一つが海外赴任者の留守宅管理にとどまらないサービスである。日本ではじめてグローバル・リロケーションサービスを展開したのは株式会社リロケーション・インターナショナルである。従来までの留守宅の管理という不動産サービスの考えとは別に、留守宅管理からはじまり、海外引越・予防接種サポート・健康診断手配・トランクルーム・海外郵便物転送まで、転居に伴うトータルなサービスインフラを構築しているリロケーションサービス会社がでてきている。