弁済供託(べんさいきょうたく)とは、弁済者(債務者又はこれに代わって弁済をすることができる者)が、債権者のために弁済の目的物を供託することによって、債務を免れるための制度をいう。
弁済供託をすることができるのは、次の2つの場合である(これらの、供託をすることができる要件を供託原因という)。
1.債権者が弁済の受領を拒み、又は受領することができないとき
債権者が弁済の受領を拒む場合とは、受領遅滞の場合をいうとされる。したがって、債権者があらかじめ受領を拒絶したときでも、債務者は、弁済の提供(口頭の提供)をしなければ、供託しても債務を免れることができない(。ただし、債務者が提供しても債権者が受領しないことが明確な場合には、口頭の提供をせずに供託しても有効である。
債権者が弁済を受領することができない場合とは、債権者の帰責事由の有無を問わない。
2.弁済者が過失なく債権者を確知することができないとき
弁済供託の内容は、本来の債務と同一内容でなければならないから、債権額の一部の供託では、供託した部分についても弁済供託の効力を生じない。
なお、荷受人を確知することができない場合の運送人の供託権について商法585条に定めがある。