総説
民法における委任(委任契約)は、法律行為をなすことを他人に委託し、承諾することによって成立する不要式の典型契約の一種である(第643条以下に規定がある)。委任契約の法的性質は諾成・無償・片務契約であるが、特約による有償委任の場合には諾成・有償・双務契約となる。委任契約は雇用契約や請負契約などと同様に労務供給契約の一種である。なお、委任は代理の内部関係の典型であり民法もそれを想定しているが、これ以外の場合にも代理権が授与されることはある(雇用契約など)。
ローマ法以来、委任は高尚な知的労務の提供であって対価を得てやるようなものではない(一種の啓蒙活動)との認識から無償が原則とされてきた。しかし現実社会においては報酬を特約することが多い(医療契約や弁護士との訴訟代理契約など一般に有償契約であることが多い)。
委任に類似する法的関係
委任契約は他人のために労務やサービスを提供する法的な関係であるという点で、雇用(雇傭)契約、請負契約、寄託契約ならびに事務管理と共通する。しかし、以下の点で区別される。
雇用とは、委任においては受任者が自らの裁量で事務を処理する(独立性がある)点が異なる。
請負とは、仕事の完成を契約の目的としない点で区別される。
寄託とは、委託される事務の内容が物の保管に限定されている点が委任と相違がある。
事務管理とは、合意によらず(すなわち、頼まれもしないのに勝手に)他人の事務処理を行う点に差異がある。
寄託や事務管理においては上述したように類似性が見られるため、委任の規定が準用されている(寄託では第665条、事務管理では第701条によって準用されている)。